2026.06.28予防歯科

妊娠中の歯周病が早産リスクに?中目黒の歯医者が伝える予防法

妊娠がわかってから、なぜか歯ぐきが腫れやすくなった、歯磨きのときに出血する——そんな変化に戸惑っている妊婦さんは少なくありません。実際、当院でも「つわりで歯磨きがつらくて、口の中が気持ち悪い」「歯周病が赤ちゃんに影響すると聞いて不安」というご相談を妊娠中の方から本当によく受けます。お腹の赤ちゃんを守りたいという気持ちが強いからこそ、口の中のトラブルが余計に心配になるのだと思います。

妊娠中の歯周病は、単なるお口の問題にとどまりません。早産や低体重児出産との関連が指摘されており、決して軽く見てよいものではないのです。ここでは、なぜ妊娠中に歯ぐきが悪くなりやすいのか、そして赤ちゃんとご自身のためにどう予防していけばよいのかを、中目黒で診療する一歯科医師の立場から丁寧にお話しします。

なぜ妊娠中は歯周病になりやすいのか

妊娠すると、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが大きく増加します。実はこのホルモン、歯周病の原因となる特定の細菌の増殖を促してしまう性質があります。さらに、ホルモンの影響で歯ぐきの血管が拡張し、ちょっとした刺激でも炎症や出血が起こりやすくなる。これが「妊娠性歯肉炎」と呼ばれる状態です。

加えて、つわりの影響も見逃せません。歯ブラシを口に入れると気持ち悪くなって、十分に磨けない時期がどうしても出てきます。食事の回数が増えたり、酸っぱいものや甘いものを少しずつ食べたくなったりすることで、口の中が酸性に傾きやすくなる。こうした条件が重なって、妊娠中はお口の環境が一気に悪化しやすいのです。

診療の現場では、妊娠前まで歯ぐきがとても健康だった方が、妊娠中期あたりから急に出血や腫れを訴えるケースを何度も見てきました。これは決してその方の手入れが悪くなったからではなく、体の自然な変化によるものです。だからこそ、妊娠前後でケアの仕方を一段階レベルアップさせる必要があります。

歯周病と早産・低体重児出産のつながり

「歯ぐきの炎症が、どうしてお腹の赤ちゃんに関係するの?」と疑問に思われるかもしれません。歯周病が進行すると、歯ぐきの中で炎症性の物質(プロスタグランジンやサイトカインなど)が産生されます。これらの物質は、本来は出産時に子宮の収縮を促す働きを持つもの。歯周病による慢性的な炎症がこれらを増やすことで、予定より早く陣痛が始まってしまう可能性が指摘されているのです。

研究によっては、重度の歯周病をもつ妊婦さんは、そうでない方に比べて早産や低体重児出産のリスクが高まるという報告もあります。もちろん歯周病だけが原因ですべてが決まるわけではありませんが、コントロールできるリスク因子の一つであることは確かです。喫煙や食生活と同じように、お口のケアも「赤ちゃんのためにできること」の一つだと考えていただきたいのです。

逆に言えば、妊娠中にしっかり歯周病をケアしておくことは、ご自身の健康だけでなく赤ちゃんへのリスクを下げることにつながります。私はいつも妊婦さんに「お口のケアは、もう一つのマタニティケアですよ」とお伝えしています。難しいことではなく、正しい知識と少しの工夫で十分に予防できるものです。

つわり中でも実践できる毎日のケア

歯磨きがつらい時期は、無理に長く磨こうとしなくて構いません。体調の良いタイミングを見つけて磨く、ヘッドの小さい歯ブラシを使う、香料の強い歯磨き粉を避ける——こうした小さな工夫だけでもかなり楽になります。どうしてもブラシを入れられないときは、洗口液で口をゆすぐだけでも、何もしないよりずっとましです。

歯磨き粉の成分にも目を向けてみてください。フッ化物配合の歯磨剤はむし歯予防の基本ですが、近年の研究では、フッ化スズを最適化した歯磨剤が歯垢と歯肉炎のコントロールに有効であることが報告されています(1997年の6か月臨床研究)。歯ぐきの炎症が気になる妊娠期には、こうした抗炎症・抗菌に配慮した処方を選ぶのも一つの手です。また、外因性のステイン(着色)が気になる方には、ピロリン酸塩を配合した歯磨剤がステイン予防に効果を示したという報告(2002年)もあり、製品選びの参考になります。

そして歯の脱灰、つまりむし歯のはじまりを防ぐ観点では、フッ化物だけに頼らない新しい予防アプローチの研究も進んでいます。2017年の総説では、唾液タンパク質の保護作用に着目した機能性ペプチド(スタテリン由来ペプチドやP11-4など)が、歯の再石灰化や脱灰予防に役立つ可能性が示されています。つわりで口の中が酸性に傾きやすい妊娠期は、こうした再石灰化を助けるケアと相性が良いと考えています。

妊娠中に歯科を受診するベストなタイミング

「妊娠中に歯医者へ行っても大丈夫ですか?」というご質問も非常に多いです。結論から言えば、安定期にあたる妊娠中期(おおむね16〜27週)であれば、多くの歯科治療を安全に受けていただけます。お腹が大きくなりすぎる前で、体調も比較的落ち着いているこの時期に、一度お口のチェックとクリーニングを受けておくことを強くおすすめします。

もちろん、強い痛みや腫れがあるときは時期を問わず早めにご相談ください。妊娠初期や後期でも、応急的な処置や歯石除去などは体調に配慮しながら行えます。レントゲンや麻酔についても不安をお持ちの方が多いのですが、防護や薬剤の選択を適切に行えば、必要な範囲で安全に対応できます。自己判断で放置するほうが、かえってリスクになることのほうが多いのです。

中目黒で歯医者をお探しの妊婦さんには、まず無理のない範囲でプロによるクリーニングを受けていただきたい。歯石やバイオフィルムは、ご自宅のケアだけでは落としきれません。専門的なクリーニングで炎症の原因を取り除いておくことが、早産リスクを下げる一番現実的な近道だと考えています。

中目黒コヤス歯科の全身を診る予防アプローチ

当院では、お口の中だけを切り取って診るのではなく、母体と赤ちゃんの全身状態を見据えたケアを大切にしています。院長は歯学博士として歯周病やインプラントの臨床に長く携わってきました。妊娠期特有のホルモン変化や体調の波を理解したうえで、その方に合ったペースで治療計画を立てていきます。

特に力を入れているのが、栄養療法・分子整合医学の視点を取り入れた予防です。歯ぐきの健康は、ビタミンCやタンパク質、鉄など日々の栄養状態と深く関わっています。妊娠中は赤ちゃんに栄養を優先的に送るため、お母さん自身が栄養不足に陥りやすい時期。歯ぐきの炎症がなかなか改善しない背景に、栄養面の課題が隠れていることも少なくありません。当院では、こうした全身的な視点からも歯周病の予防をサポートします。

また、将来的に歯を失った部分の治療が必要になった場合に備え、当院は身体に優しいバイコンインプラントを採用しています。妊娠中に積極的な処置を行うことは少ないものの、出産後を見据えた長期的なお口の健康設計まで一緒に考えていけるのが、当院の強みです。中目黒の歯科として、妊娠期から産後までずっと寄り添える存在でありたいと思っています。

よくある質問

妊娠中に歯石取りやクリーニングを受けても問題ありませんか?

はい、特に安定期であれば問題なく受けていただけます。歯石やバイオフィルムは歯周病の大きな原因で、ご自宅のケアだけでは取り切れません。体調に配慮しながら無理のない範囲で進めますので、出血や腫れが気になる方ほど、早めのクリーニングをおすすめします。

つわりで歯磨きができません。どうすればよいですか?

無理に長く磨こうとせず、体調の良い時間帯に短時間でも磨くことから始めてください。ヘッドの小さい歯ブラシや香りの少ない歯磨き粉に変えると楽になります。どうしても難しいときは、洗口液でゆすぐだけでも口内環境の悪化をある程度防げます。

歯周病があると本当に早産しやすくなるのですか?

歯周病による慢性的な炎症が、子宮収縮を促す物質を増やし、早産や低体重児出産のリスクを高める可能性が指摘されています。歯周病だけが原因ではありませんが、自分でコントロールできるリスク因子の一つです。だからこそ妊娠期のケアが大切になります。

まとめとご案内

妊娠中の歯ぐきの変化は、決して気のせいでも手入れ不足でもありません。ホルモンの影響で誰にでも起こりうるものであり、放置すれば早産リスクにもつながりかねない、しっかり向き合うべきテーマです。つわり中でもできる工夫を取り入れ、安定期には専門的なクリーニングを受けておくこと。この二つを意識するだけで、ご自身と赤ちゃんを守る大きな一歩になります。中目黒駅近くの当院では、妊婦さん一人ひとりの体調と全身状態に配慮した予防ケアを行っています。お口のことで不安を感じたら、どうか一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋

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