「インプラントを考えているけれど、CTを撮ると言われた。レントゲンとどう違うの?被ばくは大丈夫なの?」——カウンセリングの場で、こうした不安を口にされる方は本当に多いです。特にお子さんを育てておられる方や、過去に大きな病気でCTを何度も撮った経験がある方ほど、放射線という言葉に敏感になられるのは自然なことだと感じています。
実際の診療現場では、「被ばくが怖いからCTなしでインプラントできませんか」とご相談を受けることも珍しくありません。お気持ちはよくわかります。ただ、結論から正直にお伝えすると、安全で確実なインプラント治療のためには、歯科用CTによる事前検査は欠かせないものです。そして、その被ばく量は多くの方が想像されているよりもずっと小さい。今日はそのあたりを、できるだけ誤魔化さずにお話しします。
なぜインプラントにレントゲンとCTの両方が必要なのか
歯科のレントゲン、いわゆるパノラマX線写真は、お口全体を一枚の平面画像として写し出します。虫歯の有無や歯の根の状態、骨のおおまかな高さを把握するには非常に優れた検査です。ただ、これはあくまで「2次元」の情報。骨を横から押しつぶしたような平面でしか見えないため、骨の厚み(幅)や、神経・血管がどの位置を走っているかという立体的な情報までは正確につかめません。
一方で歯科用CT(コーンビームCT)は、顎の骨を立体的、つまり「3次元」で再現します。インプラントは骨の中に人工歯根を埋め込む手術です。下顎には下歯槽神経という重要な神経が、上顎には上顎洞という空洞があります。これらをミリ単位で避けながら、最適な太さと長さのインプラントを安全に埋入するためには、骨の立体構造を正確に知る必要があるのです。
私自身、長年診療を続けてきて思うのは、CTを撮らずに「だいたいこのあたりだろう」で手術することの怖さです。骨の幅が想像より薄かった、神経が予想より上にあった——そうした想定外を手術中に初めて知るのは、患者様にとっても術者にとってもリスクでしかありません。事前の立体把握こそが、トラブルを未然に防ぐ最大の安全装置だと考えています。
歯科用CTの被ばく量は実際どのくらいなのか
ここが一番気になるところだと思います。歯科用コーンビームCTの被ばく線量は、撮影範囲や機種にもよりますが、おおむね数十マイクロシーベルト(μSv)程度です。これがどれくらいかと言うと、私たちが日常生活で自然界から浴びている放射線(自然放射線)は、日本では年間およそ2,100μSv(約2.1ミリシーベルト)。歯科用CT一回の撮影は、この自然放射線の数日分から十数日分に相当する程度に収まることがほとんどです。
飛行機で東京とニューヨークを往復するだけでも、宇宙からの放射線で約100〜200μSvを浴びると言われています。つまり、海外旅行一回分よりも少ない被ばくで、お口の立体情報が手に入る、というイメージを持っていただくと安心しやすいかもしれません。医科で使われる全身用CTと比べても、歯科用コーンビームCTは照射範囲が顎周辺に限定されるため、被ばく量は格段に少なく抑えられます。
もちろん、ゼロではありません。だからこそ私たちは「必要なときに、必要な範囲だけ」撮影することを徹底しています。撮らなくてよい検査はしませんし、防護エプロンの使用や撮影条件の最適化など、被ばくを最小限にする配慮を当然のこととして行っています。放射線への不安と、検査で得られる安全性のメリット。この両者を天秤にかけたとき、インプラント手術においてはCTの恩恵が圧倒的に大きい、というのが医学的な共通認識です。
骨の状態を正確に読むことが、長期安定につながる理由
CTで得た情報が、その後の治療の質を大きく左右します。たとえば、骨の質や量を正確に把握できれば、骨造成という追加手術を本当に行う必要があるのかどうかも見極められます。当院が採用しているバイコンインプラント(Bicon Dental Implants)は、ショートインプラントのパイオニアとして長い歴史を持ち、短く設計されたインプラントでも強固に骨と結合することが数多くの臨床論文で示されています。CTで「骨が足りない」と判断されたケースでも、骨造成を避けて治療できる可能性が広がるのです。
バイコンの特徴は、ネジ(スクリュー)を使わない独自の1.5度ロッキングテーパー構造にあります。インプラント体とアバットメントの接合部に隙間がほとんど生まれないため、細菌が内部に侵入するのを防ぐバクテリアルシールが働きます。スクリュー周囲から細菌が漏れ込んで起こるトラブルを構造的に回避できる、という点は、長期の安定を考えるうえで非常に意味のある設計だと感じています。
さらに、表面のプラトー(フィン)デザインが骨との接触面積を増やし、ハバース管骨(生きた緻密な骨組織)の形成を促すことが報告されています。CTで読み取った骨の質と、こうしたインプラントの特性を掛け合わせて治療設計を行う。立体的な診断があってこそ、この精密な計画が成り立つわけです。
持病や服薬がある方こそ、事前の精密検査が大切
インプラントは外科手術ですから、全身の健康状態と無関係ではいられません。たとえば抗血栓薬を服用されている方の手術計画には、特別な注意が必要です。近年の研究では、静脈血栓塞栓症の治療において直接経口抗凝固薬がビタミンK拮抗薬に大きく取って代わってきた一方で、有効性と安全性のギャップが末期腎疾患や抗リン脂質症候群などで依然として残ること、そして第XI因子の阻害が新たな治療標的として注目されていることが報告されています(2021年)。こうした薬剤の動向を理解しておくことは、外科処置を安全に行ううえで欠かせません。
また、骨そのものの質に関わる研究も日々進んでいます。バイオセラミックスの分野では、カリウムやストロンチウムイオンを加えたポリリン酸カルシウム足場が、骨組織再生の生体適合性や生体力学特性を向上させる可能性が示されています(2012年)。骨と人工材料がどう結びつくかという基礎研究の積み重ねが、私たちの臨床判断を支えてくれています。
骨の状態を画像で評価する手法には歴史があり、古くは1974年のテクネチウムを用いた骨イメージングの研究で、撮影品質や解釈上の落とし穴が詳細に検討されていました。画像診断は「撮れば終わり」ではなく、誰がどう読むかが結果を左右します。だからこそ当院では、撮影した画像を歯学博士である院長が責任を持って読影し、全身状態と照らし合わせて判断しています。
中目黒コヤス歯科の検査と全身的アプローチ
中目黒で歯科・インプラントをお探しの方に、当院が大切にしていることをお伝えします。院長は歯学博士であり、画像診断とインプラント治療の両面で、根拠に基づいた判断を心がけています。CT撮影の必要性は一人ひとり丁寧にご説明し、なぜ撮るのか、被ばくはどの程度か、納得いただいたうえで進めます。
当院のもう一つの軸が、栄養療法・分子整合医学を取り入れた全身的なアプローチです。インプラントが骨としっかり結合し、長く保たれるためには、お口の中だけでなく、骨や歯ぐきを作る土台である栄養状態が重要になります。手術の成功は技術だけでなく、患者様ご自身の治る力に支えられている。だからこそ、必要に応じて栄養面のアドバイスも含めてサポートしています。
バイコンインプラントという信頼性の高いシステムと、精密な画像診断、そして全身を診る視点。この三つを組み合わせることが、中目黒という地域で皆様に安心して通っていただける歯科でありたいという私たちの願いです。
よくある質問
妊娠中でも歯科用CTを撮って大丈夫ですか?
歯科用CTの被ばくは顎周辺に限定され量も少ないですが、妊娠中の方には原則として緊急性のない撮影は控え、出産後に予定を組むことをおすすめしています。必ず妊娠中であることを事前にお伝えください。状況に応じて、より慎重な対応を一緒に考えます。
過去に医科でCTを撮りました。歯科でも撮ると被ばくが増えませんか?
歯科用コーンビームCTは医科の全身用CTよりも照射範囲が狭く、被ばく量はかなり少なく抑えられます。とはいえご不安があれば、過去の検査歴をお聞きしたうえで、本当に必要な範囲だけを撮影するよう調整します。遠慮なくご相談ください。
CTを撮らずにインプラント手術はできないのですか?
安全のため、当院ではインプラント手術前のCT検査を原則必須としています。骨の幅や神経の位置を立体的に把握できないまま手術を行うのは、神経損傷などのリスクが高まるためです。被ばくよりも、検査で防げるトラブルのほうがはるかに大きいとお考えください。
まとめとご案内
インプラントのCT検査に対する被ばくの不安は、けっして大げさなものではありません。ただ、その量は自然放射線の数日分程度で、得られる安全性のメリットと比べれば十分に許容できる範囲に収まります。立体的な診断があってこそ、神経を避けた安全な手術、そして骨造成を回避できる可能性まで見えてくるのです。中目黒駅近くの当院では、検査の必要性や被ばくについて一つひとつ丁寧にご説明したうえで、バイコンインプラントによる長期的に安定した治療をご提案しています。被ばくや検査のことで気になる点があれば、まずはお気軽にご相談ください。
中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋




