「フロスって、歯ブラシの前に使うの?後に使うの?」——診療室でこの質問をいただくことは、本当に多いです。せっかく毎日フロスを使っているのに、順番を間違えていたり、力任せに通してしまって歯茎を傷つけていたり。実はもったいない使い方をされている方が少なくありません。中目黒で歯科医院を営んでいると、こうした「良かれと思ってやっていたケア」が空振りしているケースに、日々出会います。
今日は、フロスの正しい使い方と、歯ブラシとの順番について、臨床の現場で私が実際にお伝えしていることを丁寧に書いていきます。難しい話ではありません。ただ、ちょっとしたコツを知っているかどうかで、5年後10年後のお口の状態は驚くほど変わってきます。
そもそも、なぜフロスが必要なのか
歯ブラシだけで落とせる汚れは、全体のおよそ6割程度と言われています。残りの4割、つまり歯と歯の間にこびりついたプラーク(歯垢)は、歯ブラシの毛先がどうしても届きません。ここを放置すると、虫歯や歯周病の温床になります。
特に歯と歯の接触面は、鏡で見ても確認しづらく、痛みが出た頃にはかなり進行していることも珍しくありません。実際の診療では「毎日きちんと磨いているのに、歯と歯の間だけ虫歯になった」という方をよく診ます。その多くが、フロスの習慣がなかった方です。
フロスは単なる「補助アイテム」ではなく、歯ブラシと対になる必須のケアだと考えてください。歯間ブラシとの使い分けについては後ほど触れますが、まずはフロスを味方につけることが、歯を長く残す第一歩になります。
フロスと歯ブラシ、正しい順番は「フロスが先」
結論から言うと、私は「フロス→歯ブラシ」の順番をおすすめしています。理由は明確です。先にフロスで歯間の汚れを掻き出しておくと、その後の歯磨きで歯磨き粉の有効成分(フッ素など)が歯と歯の間まで届きやすくなるからです。
逆の順番、つまり歯を磨いてからフロスを通すと、せっかく歯磨き粉で運ばれてきたフッ素が届く前に汚れがフタをしている状態になりがちです。海外の予防歯科の研究でも、フロスを先に行うことで歯間部のフッ素残留量が高まるという報告があり、私自身もこの順番を臨床で推奨しています。
ただし、ここで一番大切なことをお伝えします。順番以上に重要なのは「毎日続けること」です。順番にこだわりすぎて「今日は面倒だからやめておこう」となっては本末転倒。ご自身が続けやすいタイミングで構いませんので、まずは1日1回、就寝前のフロスを習慣にしてみてください。
フロスの正しい使い方を手順で解説
ここからは具体的な手順です。糸巻きタイプ(ロールフロス)を例にお話しします。
- ①長さは40cm前後を目安に切り出します。両手の中指に巻き付け、実際に使う部分は2〜3cm程度に。
- ②親指と人差し指でつまみ、ゆっくり歯間へ。ここで力任せに「パチン」と押し込むのは厳禁です。歯茎を傷つける原因になります。左右にスライドさせながら、のこぎりを引くようにそっと入れましょう。
- ③歯の側面に沿わせてC字型に。片方の歯の面にフロスを沿わせ、上下に数回動かして汚れを掻き出します。反対側の歯面も同様に。
- ④きれいな部分に少しずらして次の歯へ。同じ場所ばかり使うと、汚れを別の歯間に運んでしまいます。
最初のうちは奥歯が難しく、うまく通せないかもしれません。そういう方には、持ち手のついたホルダータイプ(Y字・F字)から始めていただくこともあります。慣れてきたらロールタイプへ移行すると、より細やかなケアができます。
出血が続く場合は、フロスの使い方が悪いのではなく、その部分に歯肉炎が起きているサインであることが多いです。数日続けて出血が減らないときは、無理をせず一度ご相談ください。
ピロリン酸配合など「機能性フロス」の話
最近はさまざまな成分を配合したフロスが市販されています。中でも興味深いのが、歯石の沈着を抑える目的で研究されてきた成分です。1998年に報告された臨床研究では、ピロリン酸四ナトリウムを配合したデンタルフロスと、成分を含まないプラセボフロスとで、歯肉縁上の歯石形成を比較検証しています。下の前歯を対象に、スケーリング後の一定期間で歯石のつき方を観察するという、なかなか緻密なデザインの研究でした。
ピロリン酸には、唾液中のカルシウムが結晶化して歯石へと変わるのを抑える働きが期待されています。こうした成分入りのフロスが「歯石をゼロにする」わけではありませんが、日々のケアにプラスアルファの価値を与えてくれる可能性はあります。
とはいえ、私が現場でお伝えしているのは「成分よりもまず正しい使い方」です。どんなに優れた成分が入っていても、通し方が雑では効果は半減します。まずは基本の使い方を身につけ、その上でご自身の悩みに合ったフロスを選んでいく。この順序を大切にしてください。
中目黒コヤス歯科ならではの全身的アプローチ
当院では、フロス指導ひとつをとっても「なぜ出血するのか」「なぜ歯石がつきやすいのか」を、お口の中だけでなく全身の状態から考えます。院長である私は歯学博士として、分子整合栄養医学の視点を診療に取り入れてきました。歯茎の炎症や治りにくさの背景に、栄養状態やビタミンの不足が関わっているケースは少なくないからです。
免疫の分野では、B細胞の活性化を負に制御する受容体に関する研究なども進んでおり、体内の炎症コントロールは想像以上に精緻な仕組みで成り立っています。お口の健康は、決してお口だけで完結するものではありません。フロスで出血が続く方に、生活習慣や栄養面のアドバイスまで踏み込めるのが、当院の特徴です。
また、失ってしまった歯に対しては、骨への負担が少なく短い歯根形状が特徴のバイコンインプラントを採用しています。「予防」と「治療」の両面から、患者様一人ひとりに合わせた提案ができる体制を整えています。中目黒で歯医者をお探しの方、日々のセルフケアに不安がある方は、ぜひ一度その手応えを確かめにいらしてください。
よくある質問
フロスは1日に何回使えばいいですか?
基本は1日1回、就寝前で十分です。睡眠中は唾液が減り細菌が繁殖しやすいため、寝る前に歯間の汚れを取り除いておくことが理にかなっています。もちろん毎食後行えれば理想ですが、続かなければ意味がありません。まずは夜だけでも確実に習慣化しましょう。
フロスをすると出血します。やめたほうがいいですか?
やめないでください。出血の多くは、その部分に歯肉炎が起きているサインです。正しく使い続けることで炎症が改善し、数日から数週間で出血は減っていくことがほとんどです。ただし、力の入れすぎで傷つけている場合もあるため、出血が長引くときは当院でチェックを受けることをおすすめします。
歯間ブラシとフロス、どちらを使えばいいですか?
歯と歯の隙間の広さで使い分けます。隙間が狭い方はフロス、歯茎が下がって隙間が広い方は歯間ブラシが適しています。両方併用が理想的なケースもあります。ご自身の歯並びに合ったサイズや種類は、診療時にお伝えできますのでお気軽にお尋ねください。
まとめとご案内
フロスは「歯ブラシの前」に、力を抜いてやさしく、歯の側面にC字に沿わせて使う。これが基本です。そして何より、完璧を目指すより毎日続けることが、10年後のお口を守ります。順番や成分の知識は、その習慣を支える補助輪のようなものだと思ってください。
「自分のやり方が合っているか自信がない」「出血が気になる」——そんな小さな不安こそ、早めに解消しておく価値があります。中目黒駅近くの当院では、一人ひとりの歯並びに合わせたセルフケア指導から、栄養面を含めた全身的なサポートまで丁寧に行っています。まずはお気軽にご相談ください。
中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋




