2026.07.07予防歯科

妊娠中の歯科治療はいつが安全?中目黒の歯科医が本音で解説

お腹に赤ちゃんがいると分かった途端、「歯が痛いけど、治療していいのかな」「レントゲンや麻酔って大丈夫なの?」と急に不安が押し寄せてくる。中目黒で診療をしていると、そうした戸惑いを抱えてご来院される妊婦さんが本当に多いんです。特に初めての妊娠だと、何が良くて何がいけないのか、判断がつかなくて当然だと思います。

実際のところ、妊娠中でも歯科治療は受けられます。ただし「いつ受けるか」でずいぶん体への負担が変わってくる。ここを知っているかどうかが、快適なマタニティ期を過ごせるかの分かれ道になります。

今日は少し踏み込んで、時期ごとの注意点や、麻酔・レントゲンの安全性、そして意外と見落とされがちな「鉄分と貧血」の話まで、現場で感じていることを正直にお話しします。

妊娠中の歯科治療、ベストなタイミングは安定期

結論からお伝えすると、積極的な歯科治療に一番向いているのは妊娠中期(安定期・16週〜27週頃)です。この時期はつわりが落ち着き、お腹もまだそれほど大きくなっていないので、治療椅子に長く座っていても比較的楽に過ごせます。

妊娠初期(15週頃まで)は、器官が形成される大切な時期で、つわりも強い方が多い。この時期は応急処置にとどめ、本格的な治療は避けるのが基本です。とはいえ、痛みを我慢すると強いストレスになり、それ自体が母体に良くありません。「初期だから何もできない」わけではなく、「痛みや腫れを抑える処置は行う」というのが実際の対応になります。

妊娠後期(28週以降)になると、大きくなったお腹で仰向けの姿勢がつらくなり、長時間の治療は血圧低下(仰臥位低血圧症候群)を招くこともあります。この時期はやはり応急処置中心。だからこそ、安定期のうちにしっかり治しておく、この段取りが後々の安心につながります。

レントゲンと麻酔、本当のところ安全なの?

妊婦さんが最も気にされるのが、この二つです。まずレントゲンについて。歯科用のレントゲンは撮影範囲がごく狭く、被ばく量は非常に微量です。さらに防護用のエプロンを着用しますので、お腹の赤ちゃんへの直接的な影響はほぼ考えなくてよいレベルとされています。

参考までに、放射性の物質を使った画像診断は医療現場で幅広く応用されています。1979年に報告された顎顔面領域のがん評価に関する研究では、テクネチウム99mを用いた骨イメージングが「安全で簡単な診断技術」として位置づけられていました。もちろんこれは特殊な検査の話ですが、画像診断技術が長年にわたり安全性を検証されながら発展してきた背景を示す一例と言えます。日常の歯科用レントゲンは、それよりもはるかに低い被ばくで済みます。

麻酔についても、局所麻酔(歯ぐきに打つタイプ)は使用量がごくわずかで、通常量であれば胎盤を通じて赤ちゃんに悪影響を及ぼす心配は基本的にありません。むしろ、痛みを我慢しながら治療を受けるほうが、体に大きなストレスがかかります。適切に麻酔を使い、痛みなくスムーズに終わらせるほうが安全なケースは多いんです。

妊娠中に虫歯や歯周病が悪化しやすい理由

「妊娠したら急に歯が悪くなった気がする」という声、本当によく聞きます。これは気のせいではありません。妊娠中はホルモンバランスの変化により歯周病菌が増えやすく、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなる「妊娠性歯肉炎」が起こりやすくなります。

加えて、つわりで歯磨きがつらくなったり、食事の回数が増えたりすることで、口の中が酸性に傾きやすい。こうした条件が重なって、虫歯も進行しやすくなるわけです。実際の診療でも、妊娠を機に一気に複数の虫歯が見つかるケースは珍しくありません。

見逃せないのは、進行した歯周病が早産や低体重児出産のリスクと関連すると報告されている点です。お口の健康は、お母さんだけでなく赤ちゃんの健やかな成長にも関わってくる。だからこそ、妊娠中の口腔ケアは「余裕があれば」ではなく「優先すべきこと」として捉えていただきたいのです。

見落としがちな「鉄分・貧血」と口腔ケアの関係

当院が栄養面からのアプローチを大切にしている理由の一つが、この貧血の問題です。妊娠中は赤ちゃんに鉄を送るため、母体は鉄欠乏性貧血(IDA)に陥りやすい。鉄が不足すると口腔粘膜が弱くなり、口内炎や歯肉のトラブルが起こりやすくなることもあります。

2025年に報告されたランダム化比較試験では、鉄欠乏性貧血を伴う妊娠中期の妊婦を対象に、乳化ミクロソームピロリン酸第二鉄(鉄27mg)と従来のアスコルビン酸第一鉄(鉄100mg)を比較しています。興味深いのは、前者が3分の1という低用量にもかかわらず、ヘモグロビンやフェリチンの改善効果は同等だったという点。しかも吐き気や黒色便といった胃腸の副作用が報告されず、忍容性と安全性に優れていたと結論づけられていました。

これは、単に鉄をたくさん摂ればよいのではなく、「体に負担なく吸収される形で補う」ことの大切さを示しています。めまいや倦怠感、動悸といった症状の改善もみられたとのことで、貧血対策はお口だけでなく妊婦さんの体調全般に関わります。歯科と栄養は切り離せない、というのが私の考えです。

中目黒コヤス歯科の妊婦さんへのアプローチ

当院の院長は歯学博士であり、口の中だけを診るのではなく、全身の状態から口腔環境を捉える視点を大切にしています。妊娠中の患者さんに対しても、単に「歯を削って詰める」で終わらせず、なぜトラブルが起きているのか、体全体の背景を含めて考えます。

分子整合医学・栄養療法の知見を取り入れているのも、当院ならではの特徴です。先ほどの鉄分の話のように、口腔トラブルの背景に栄養状態が関わっていることは少なくありません。妊婦さんの体に無理のない範囲で、口腔ケアと全身のコンディションの両面からサポートしていきます。

また、骨との結合に優れたバイコンインプラントを採用するなど、長期的なお口の健康を見据えた治療体制を整えています。妊娠中は積極的なインプラント治療は行いませんが、出産後を見据えたトータルな治療計画を一緒に立てていくことができます。中目黒で歯医者をお探しの妊婦さんに、安心して通っていただける環境づくりを心がけています。

よくある質問

妊娠に気づかず歯科治療を受けてしまいました。大丈夫でしょうか?

過度に心配される必要はありません。歯科用レントゲンは防護エプロンを着用すれば被ばくは微量で、局所麻酔も通常量であれば影響はほぼ考えられないとされています。不安な点があれば、受けた治療内容を担当医にお伝えいただければ、あらためて丁寧にご説明します。

つわりがひどくて歯磨きができません。どうすればいいですか?

無理に一度で磨こうとせず、体調の良いタイミングで少しずつ磨くのがコツです。ヘッドの小さい歯ブラシを使う、香りの強い歯磨き粉を避ける、うがいだけでも回数を増やす、といった工夫で負担が減ります。当院でも、その方に合った方法を一緒に考えます。

妊娠中に鉄剤を飲むと歯や体に良いですか?

鉄欠乏性貧血がある場合、適切な鉄補給は口腔粘膜や全身の状態改善に役立つ可能性があります。ただし種類や量は必ず産婦人科の指示に従ってください。研究では吸収性の良い鉄は低用量でも効果があり副作用も少ないと報告されており、自己判断ではなく専門家と相談して選ぶことが大切です。

まとめ:不安なままにせず、まずはご相談を

妊娠中の歯科治療は、安定期を中心に計画すれば安全に受けられます。レントゲンや麻酔も適切に行えば過度に恐れる必要はなく、むしろ痛みや炎症を放置するほうがリスクになります。そして、鉄分をはじめとする栄養状態が口腔環境と密接に関わっていることも、ぜひ知っておいてください。

中目黒駅近くの当院では、妊婦さん一人ひとりの体調や時期に合わせて、無理のない治療とケアをご提案しています。「今治療していいのか分からない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。お母さんと赤ちゃん、二人の健康を一緒に守っていきましょう。

中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋

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