「もう入れ歯には戻りたくない」「上の歯が全部だめになってしまった」——診療室で、こういった深刻なお悩みを打ち明けてくださる患者様は少なくありません。総入れ歯の不安定さや、噛むたびに感じる違和感。そこから解放される選択肢として近年注目されているのが、全ての歯をインプラントで支える治療です。ただ、いざ調べてみると「本数は何本必要なのか」「費用はどのくらいかかるのか」がバラバラで、かえって不安になってしまう方が多いのではないでしょうか。
中目黒コヤス歯科では、多くの歯を失った方に対して、その方の骨や全身の状態を踏まえた治療をご提案しています。ここでは「オールオン4」を中心に、全部の歯をインプラントにするときの本数の考え方、費用の目安、そして当院が採用しているバイコンインプラントの特性まで、現場の視点から正直にお話しします。
全部の歯をインプラントにするとき、何本必要なのか
「歯が全部ないなら、その分だけインプラントを埋めるのですか?」とよく聞かれます。実際にはそうではありません。片顎に14本の歯があったからといって、14本のインプラントを埋め込むわけではないのです。人工の歯(上部構造)を土台となる少ない本数のインプラントで支える、という発想が主流になっています。
代表的な「オールオン4」は、その名の通り片顎あたり4本のインプラントで、連結した12本前後の人工歯を支える方法です。骨がしっかり残っている部位を選び、後方の2本は斜めに傾斜させて埋入することで、少ない本数でも安定した支持を得ます。骨の状態がやや心配な場合や、より強固な支えが欲しい場合には、5本や6本を用いる「オールオン6」といった選択肢もあります。
本数を決めるうえで一番大切なのは、残っている骨の量と質です。私自身、これまで多くのケースを診てきましたが、同じ「上の歯が全部ない」という状態でも、骨の残り方は人によって驚くほど違います。だからこそ、CT撮影による三次元的な診断が欠かせません。本数はあくまで結果であって、はじめに「4本ありき」で決めるものではない、というのが正直な感覚です。
オールオン4の費用の目安と、その内訳
費用は多くの方が最も気にされる部分でしょう。オールオン4は片顎あたり、おおよそ200万円〜400万円程度が一般的な相場とされています。上下両方となると倍近い金額になるため、決して軽い決断ではありません。金額に幅があるのは、使用するインプラントの種類、上部構造の材質(レジン系かジルコニアなどのセラミック系か)、そして骨造成の有無によって大きく変わるためです。
この費用には、通常インプラント本体の埋入手術、精密検査・診断、仮の歯、そして最終的な人工歯までが含まれます。ただし医院によって含まれる範囲が異なるので、「一式でいくらか」を最初に確認することをおすすめします。後から追加費用が発生して驚いた、という話を耳にすることがあるからです。
なお、インプラント治療は原則自由診療ですが、支払った医療費は医療費控除の対象になります。年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告で税金の一部が戻る仕組みですので、高額になりがちなこの治療では活用を検討する価値があります。当院でも領収書の発行など、手続きに必要な対応はしっかりお手伝いしています。
骨造成を避けたい方へ——バイコンのショートインプラント
全部の歯を失った方の多くが直面するのが「骨が痩せてしまっている」という問題です。歯を失った期間が長いほど、顎の骨は吸収されて薄く、低くなっていきます。従来の長いインプラントを埋めるには骨が足りず、骨造成という大がかりな追加手術が必要になるケースが少なくありませんでした。
そこで当院が採用しているのが、バイコンインプラント(Bicon Dental Implants)です。バイコンはショートインプラントのパイオニアとして長い歴史を持ち、短い長さでもしっかり機能するインプラントを世界に先駆けて臨床応用してきました。骨の高さが限られた症例でも、骨造成を回避できる可能性が高まります。これは患者様の身体的な負担、そして費用面の負担を軽減することにもつながる、実務的に非常にありがたい特徴です。
バイコンの強みは長さだけではありません。表面のプラトー(フィン)デザインと呼ばれる独特の構造が、骨との接触面積を増やし、フィンの間に本来の骨——つまりハバース管(Haversian canal)を備えた成熟した層状骨が形成されることが報告されています。単に骨がくっつくのではなく、生体本来の骨組織が育つ。この点が、少ない本数でしっかり支えるという発想と相性が良いのです。
スクリューを使わない構造がもたらす安心
一般的なインプラントは、人工歯とインプラント体を「ネジ(スクリュー)」で連結します。この構造は広く使われている一方で、ネジのゆるみや、ネジ穴の微細な隙間からの細菌侵入といったトラブルが、長期的に問題になることがあります。実際の診療現場でも、他院で入れたインプラントのネジがゆるんで来院される方をお見かけします。
バイコンはこの発想が根本から違います。1.5度ロッキングテーパー構造という、ネジを使わずに部品同士を摩擦力で強固に固定する仕組みを採用しています。テーパー(わずかな傾斜)で嵌合させることで、極めて緊密な結合が生まれ、その接合部には細菌が入り込む隙間がほとんどできません。これがバクテリアルシールと呼ばれる効果で、インプラント周囲炎などのトラブルリスクを抑えることに寄与します。
全部の歯をインプラントで支える治療は、何十年と使い続けることを前提にした投資です。だからこそ、日々の小さなトラブルが積み重ならない構造であるかどうかは、私が治療法を選ぶうえで非常に重視しているポイントです。ネジのゆるみに悩まされにくいという安心感は、長期メンテナンスを担う立場からも大きな価値があると考えています。
中目黒コヤス歯科が大切にする、全身から診る視点
私、院長の小安は歯学博士として、口の中だけを診て終わりにしない診療を心がけています。インプラントの成功は、実は骨が育つかどうか、傷が順調に治っていくかどうかという「全身の状態」に大きく左右されるからです。骨や結合組織の再生には、栄養状態が深く関わっています。
近年、骨再生の分野では新しい素材の研究も進んでいます。たとえばポリリン酸カルシウム(CPP)を用いた足場材料の研究では、多孔質構造にすることで骨欠損部の修復を促す効果が動物実験で示されています(2013年)。さらにストロンチウムを添加したCPPと骨髄由来細胞を組み合わせることで骨再生に相乗効果が得られたという報告(2015年)や、VEGF(血管内皮増殖因子)を担持させた足場が難治性の骨壊死モデルで有効性を示した研究(2019年)もあります。これらは主に整形外科領域の知見ですが、「骨をいかに育てるか」という点で、私たち歯科医が向き合っているテーマと本質的につながっています。
だからこそ当院では、栄養療法・分子整合医学の視点を取り入れ、タンパク質やビタミン、ミネラルの充足といった土台づくりも一緒に考えます。中目黒で歯医者をお探しの方、特に大がかりな治療を検討されている方には、この「回復しやすい体づくりを目指す」というアプローチをぜひ知っていただきたいと思っています。
よくある質問
オールオン4の手術当日から噛めるようになりますか?
症例によっては、手術当日に仮歯を装着して噛める「即時荷重」が可能な場合があります。ただし骨の状態やインプラントの初期固定によっては、しっかり結合を待ってから最終の歯を入れる方が望ましいこともあります。どちらが適しているかは、精密検査の結果を踏まえて丁寧にご説明します。
インプラントはどのくらい長持ちしますか?
適切なメンテナンスを続けた場合、多くの臨床報告で10年以上の長期安定が示されています。特にバイコンインプラントはショートインプラントを含む長期の臨床論文の蓄積があり、安定性が裏づけられています。ただし歯周病同様、日々のケアと定期通院が寿命を左右しますので、入れて終わりではないとお考えください。
骨が少ないと言われましたが、それでも治療は可能ですか?
可能なケースは多いです。当院ではショートインプラントに実績のあるバイコンを採用しているため、骨が少ない方でも骨造成を回避できる可能性があります。まずはCTで骨の状態を正確に把握したうえで、最適な方法をご提案します。他院で難しいと言われた方も、一度ご相談いただければと思います。
まとめとご相談のご案内
全部の歯をインプラントにする治療は、本数は片顎4〜6本が目安、費用は片顎200万〜400万円程度が相場となります。ただし本当に大切なのは数字そのものではなく、あなたの骨や全身の状態に合った計画かどうかです。少ない本数で機能を取り戻せるオールオン4、骨造成を避けられる可能性のあるバイコンのショートインプラント、そして回復しやすい体づくりを目指す栄養面のサポート。これらを組み合わせることで、負担を抑えながら長く使える口元を目指せます。
中目黒駅近くの当院では、まずお話をじっくり伺い、CT検査に基づいた誠実なご提案を心がけています。総入れ歯や多数歯欠損でお悩みの方、費用や本数に不安のある方は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたにとって無理のない選択肢を、一緒に探していきましょう。
中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋




