朝起きたときに顎がだるい、歯が浮くような感じがする、家族から「夜中に歯ぎしりの音がすごい」と指摘された――。こうした自覚のある方は、実は少なくありません。中目黒で診療をしていると、ご自身では気づかないうちに、就寝中の歯ぎしりや食いしばりで歯や歯ぐきに大きな負担をかけている患者様に本当によく出会います。しかも厄介なことに、この歯ぎしりが歯周病の進行と深く関わっているケースがあるのです。
今日は、就寝時の歯ぎしりと歯周病の関係、そして就寝時に使うマウスピース(ナイトガード)でどう守っていくのか、現場での実感を交えながらお話ししていきます。
就寝時の歯ぎしりは、自覚できないから怖い
日中の食いしばりであれば「あ、今かみしめていたな」と気づくこともできます。ところが就寝中の歯ぎしりは無意識下で起こるため、ご本人はまったく自覚がないことがほとんどです。実際の診療現場でも、「私は歯ぎしりなんてしていません」とおっしゃる方の口の中を見ると、奥歯の噛む面が平らにすり減っていたり、歯の付け根が欠けていたりする、というのは日常茶飯事です。
就寝中に発生する噛む力は、日中の食事とは比べものになりません。人によっては体重を超えるほどの力が、一晩に何度も歯にかかると言われています。しかもそれが毎晩、何年も続くわけです。歯そのものがすり減るだけでなく、歯を支えている土台――つまり歯周組織にも、静かにダメージが蓄積していきます。
「歯が割れた」「詰め物がすぐ取れる」「知覚過敏がなかなか治らない」。こうした症状の裏に、実は就寝時の歯ぎしりが潜んでいることは珍しくありません。まずは、ご自身が歯ぎしりをしている可能性を疑ってみることが、対策への第一歩になります。
歯ぎしりと歯周病はどう結びつくのか
歯周病の主な原因は、歯垢(プラーク)の中の細菌が引き起こす炎症です。ここは大前提として押さえておきたいところです。歯ぎしりそのものが歯周病を「発症」させるわけではありません。しかし、すでに歯周病で歯ぐきや骨に炎症がある状態に、就寝時の過剰な噛む力が加わると、話は変わってきます。
炎症で弱っている歯周組織に強い横揺れの力が繰り返しかかると、歯を支える骨の吸収が加速したり、歯がグラつきやすくなったりします。これを歯科では「咬合性外傷」と呼びます。炎症という化学的なダメージに、歯ぎしりという物理的なダメージが重なることで、歯周病の進行が想像以上に早まってしまうのです。
興味深いことに、体の中の結晶や石灰化の研究からも、噛む力や関節にかかる負荷が組織に与える影響の複雑さがうかがえます。たとえば変形性関節症とピロリン酸カルシウムなどの結晶沈着の関係を検討した研究(2010年)では、力学的な負荷と組織変化が単純ではないことが示唆されています。顎関節や歯周組織も、力の負担と炎症が絡み合う場所です。だからこそ、歯周病治療では細菌へのアプローチと同時に、噛む力のコントロールを見逃せないのです。
就寝時マウスピース(ナイトガード)が歯を守る仕組み
就寝中の歯ぎしりへの現実的な対策として、当院でも多くの方にご提案しているのが、就寝時に装着するマウスピース、いわゆるナイトガードです。これは歯ぎしりそのものを止める装置ではなく、歯にかかる力を分散・緩和し、歯と歯周組織を守るためのものです。
マウスピースを装着すると、上下の歯が直接ぶつからず、樹脂のクッションを介して力が受け止められます。これにより、歯のすり減りや破折を防ぎ、歯周組織への横揺れの負担も軽減できます。歯周病治療を進めている患者様にとっては、せっかく改善してきた歯ぐきを余計な力から守る「盾」のような役割を果たしてくれます。
市販のものもありますが、既製品は口に合わないと逆に噛み合わせを崩したり、かえって顎に負担をかけたりすることがあります。歯科医院で歯型を取って作るオーダーメイドのマウスピースは、一人ひとりの噛み合わせに合わせて調整できるため、装着感も効果もまるで違います。中目黒で「マウスピースを作りたい」とお考えの方は、ぜひ一度きちんと診てもらうことをおすすめします。
歯ぎしり対策と歯周病ケアはセットで考える
マウスピースはあくまで「力から守る」ための道具です。歯周病の根本原因である細菌のコントロールを怠っては、本末転倒になってしまいます。毎日の丁寧なブラッシングと、歯科医院での定期的なクリーニングが土台にあってこそ、マウスピースの効果が活きてきます。
歯磨き剤の成分に関する研究も参考になります。トリクロサン配合の歯磨剤が歯肉炎に与える効果を6か月にわたって調べた臨床研究(2002年)では、成分による炎症コントロールの可能性が検討されています。もちろん有効成分に頼るだけでなく、物理的に歯垢を落とすことが基本ですが、こうした知見は日々のセルフケアの質を高めるヒントになります。
そしてもう一つ、忘れてはいけないのが「なぜ歯ぎしりが起きるのか」という視点です。ストレス、噛み合わせの不調和、睡眠の質、生活習慣。歯ぎしりの背景は複合的です。マウスピースで守りながら、根本にある要因にも目を向けていく。この両輪で取り組むことが、長い目で見て歯を守ることにつながります。
中目黒コヤス歯科の全身的アプローチ
当院では、就寝時の歯ぎしりと歯周病を「口の中だけの問題」として切り離さず、全身の状態と結びつけて考えることを大切にしています。院長は歯学博士として研鑽を積んでおり、単に症状を対処するだけでなく、なぜその状態が生じているのかを掘り下げてご説明します。
特に力を入れているのが、栄養療法・分子整合医学の視点を取り入れた全身的アプローチです。歯周組織の健康は、実は体内のミネラルバランスや栄養状態と密接に関わっています。冒頭で触れたリン酸・ピロリン酸代謝の研究(2024年)が示すように、カルシウムやリン酸の適切なバランスは、骨や歯の石灰化に欠かせない前提条件です。歯を支える骨の健康を考えるうえで、こうした体の内側からの土台づくりは見過ごせません。
また、歯を失ってしまった方には、体に優しい設計のバイコンインプラントもご用意しています。就寝時の歯ぎしりで歯を失った、あるいは歯周病で歯が抜けてしまったという方にも、その後の噛む力のコントロールまで含めてトータルに考えたご提案が可能です。中目黒の歯医者・歯科をお探しで、根本から向き合いたいとお考えの方に、当院の姿勢がお役に立てればと思っています。
よくある質問
歯ぎしりを自分で見分ける方法はありますか?
朝起きたときの顎の疲れやだるさ、こめかみの張り、奥歯のすり減り、知覚過敏などが手がかりになります。ご家族に音を指摘されたことがある方は可能性が高いですが、音のしない食いしばりタイプもあります。気になる場合は歯科で口の中の摩耗の跡を確認してもらうのが確実です。
マウスピースは毎晩つけないと意味がないですか?
歯ぎしりは毎晩起こる方が多いため、基本的には就寝時に毎回装着していただくのが理想です。使い始めは違和感があっても、多くの方が数日から数週間で慣れていきます。装着感が悪い場合は無理をせず、調整のためにご相談ください。
歯周病が進んでいてもマウスピースは作れますか?
作れます。むしろ歯周病が進行している方こそ、噛む力から歯周組織を守る意味でマウスピースが有効なことがあります。ただし、まずは歯周病そのものの治療を並行して進めることが大前提です。状態を診たうえで最適な順序をご提案します。
まとめとご案内
就寝時の歯ぎしりは、自覚がないまま歯と歯周組織を静かに傷つけ、歯周病の進行を早めてしまうことがあります。就寝時のマウスピースは、その力から歯を守る心強い味方です。ただし、歯周病ケアと力のコントロール、そして体の内側からの健康づくりを合わせて考えることが、本当の意味で歯を長持ちさせる道になります。中目黒駅近くの当院では、歯学博士である院長が全身的な視点でお一人おひとりに向き合っています。歯ぎしりや歯周病が気になる方は、まずはお気軽にご相談ください。
中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋




