2026.08.04予防歯科

妊娠中の歯石取りはいつ?安定期の通院タイミングを中目黒の歯科が解説

妊娠がわかってから、歯ぐきの腫れや出血が気になり始めた方は少なくありません。「歯石を取りたいけれど、お腹の赤ちゃんに影響はないのだろうか」「そもそも妊娠中に歯医者へ行っていいのか」——診療室でこうした不安を口にされる妊婦さんを、これまで数えきれないほど拝見してきました。実際、妊娠中はホルモンの影響で口の中の環境が大きく変わり、いつも以上にトラブルが起こりやすくなります。だからこそ、通院のタイミングを正しく知っておくことが、母子ともに健やかに過ごすための大切な一歩になります。

妊娠すると、なぜ歯石や歯ぐきのトラブルが増えるのか

妊娠期に歯ぐきが腫れやすくなる背景には、女性ホルモンの急激な変動があります。エストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが増えると、歯周病の原因菌の一部がそれを栄養源のように利用して増殖しやすくなり、歯ぐきの炎症が強く出るようになります。これがいわゆる「妊娠性歯肉炎」で、軽く歯みがきしただけで出血する、歯ぐきがぷっくり腫れる、といった症状として現れます。

興味深いことに、妊娠中の体内では子宮内膜や胎盤といった全身の組織でホルモン受容体やシグナル伝達が活発に働いていることが報告されています。2004年の研究では、コルチコトロフィン放出ホルモン(CRH)の受容体が妊娠中の子宮や子宮内膜に存在し、着床や妊娠の維持に関わっていることが示されました。つまり妊娠中は、口の中だけでなく全身が「いつもとは違うモード」に切り替わっている時期なのです。この全身的な変化を理解しておくと、口腔ケアの重要性がより腑に落ちるかと思います。

さらに、つわりで歯みがきが十分にできなかったり、食事の回数や間食が増えたりすることも、歯垢や歯石が溜まりやすくなる一因です。歯石は歯ブラシでは落とせないため、放置すると炎症の温床になり続けます。実際の診療現場では、妊娠中期以降に「歯ぐきから血が出る」と来院され、歯石をしっかり除去しただけで症状が驚くほど落ち着く、というケースを本当によく経験します。

歯石取りに最適なのは「安定期」——その理由

妊娠中の歯石取りや歯科治療で、もっとも体への負担が少ないとされるのが妊娠16週〜27週頃の「安定期(妊娠中期)」です。この時期はつわりが落ち着き、体調も比較的安定するため、お口を長く開けての処置や、椅子を倒した姿勢でもつらさを感じにくくなります。歯石除去のようなクリーニングは、この安定期に行うのが理想的だと考えています。

一方、妊娠初期(〜15週頃)は、赤ちゃんの大切な器官がつくられる時期であり、つわりも重なりやすい時期です。緊急性のない処置は避け、まずは応急的なケアや歯みがき指導にとどめることが多くなります。妊娠後期(28週以降)になると、お腹が大きくなって仰向けの姿勢が苦しくなったり、血圧が下がる「仰臥位低血圧症候群」が起こりやすくなったりするため、長時間の治療は控えめにします。

ですから、痛みなどの症状がなくても、安定期に入ったタイミングで一度クリーニングを受けておくことを、私はいつもおすすめしています。中目黒で歯科をお探しの妊婦さんには、「体調のいい安定期のうちに、歯石だけでもすっきりさせておきましょう」とお声がけすることが多いです。この一手間が、産後の育児で忙しくなる前の大きな安心につながります。

妊娠中の歯石取り・歯科受診で気をつけたいこと

「歯石取りにレントゲンや麻酔は必要ないの?」というご質問をよくいただきます。歯石除去そのものはクリーニングなので、基本的にレントゲンも麻酔も不要です。歯や歯ぐきの状態を目で確認しながら、専用の器具で丁寧に歯石を取り除いていきます。もし虫歯の治療などで局所麻酔やレントゲンが必要になった場合でも、歯科で使う量はごくわずかで、防護エプロンの使用などにより赤ちゃんへの影響は極めて小さいと考えられています。とはいえ、不要な処置は安定期以降に計画的に行うのが基本方針です。

受診の際は、必ず妊娠していること、妊娠週数、かかりつけの産婦人科などを事前にお伝えください。体調や妊娠経過によって配慮すべき点が変わるためです。処置中に気分が悪くなったら、遠慮なく手を挙げて教えていただければ、すぐに姿勢を変えたり休憩を挟んだりします。少しでも楽な姿勢で受けていただけるよう、椅子の角度やクッションの当て方も細かく調整します。

また、栄養面の視点も見逃せません。妊娠中はカルシウムをはじめとするミネラルバランスが崩れやすい時期です。過去の研究では、動物実験レベルの話ではありますが、妊娠中の個体でカルシウム代謝の異常(低カルシウム血症)が全身症状として顕著な歯ぎしりを伴って現れたという報告もあります(1993年の羊を対象とした中毒研究)。人の妊娠に直接当てはまるものではありませんが、妊娠期にお口と全身の栄養状態が密接に関わっていることを示唆する一例として、私は日々の指導の参考にしています。

お母さんの口腔ケアは、生まれてくる赤ちゃんのためでもある

妊娠中の歯周病は、単にお母さんの口の問題にとどまりません。歯周病が進行すると、炎症性の物質が全身をめぐり、早産や低体重児出産のリスクを高める可能性が複数の研究で指摘されています。歯石を取り、歯ぐきの炎症を抑えておくことは、赤ちゃんの健やかな成長を守ることにもつながるのです。

生まれた後のことにも目を向けてみましょう。赤ちゃんの口の中には、もともと虫歯の原因菌はいません。多くは、育児の過程で身近な大人から菌が伝わっていきます。お母さん自身の口腔環境を妊娠中から整えておくことは、産後に赤ちゃんへ虫歯菌を移しにくくするうえでも意味があります。

妊娠中は、女性の身体が新しい命を育むために組織レベルで大きく変化する特別な時期です。乳腺の発達に幹細胞が関わることを示した研究(2010年)のように、母体は妊娠から授乳へと連続的に準備を進めていきます。そうした全身の営みの中で、お口の健康もまた、母子の未来を支える土台の一つになる——私はそう考えて、妊婦さんの診療にあたっています。

中目黒コヤス歯科の妊婦さんへのアプローチ

当院では、妊娠中の方一人ひとりの体調と週数に合わせて、無理のない治療計画を立てることを大切にしています。院長である私は歯学博士として口腔全体を診るだけでなく、栄養療法・分子整合医学の視点を取り入れ、お口の中の状態を「全身の一部」として捉えるアプローチを行っています。妊娠中に不足しがちなミネラルやビタミンの観点から、日々の食事や間食のとり方についてもアドバイスできるのが、当院の特徴です。

また、当院では骨との結合に優れたバイコンインプラントを採用しているなど、将来を見据えた口腔管理にも力を入れています。妊娠中は歯石取りや炎症のコントロールが中心になりますが、産後や授乳が落ち着いた後の治療も含め、長い目で伴走できる体制を整えています。中目黒駅からアクセスしやすい立地ですので、体調のいい日に無理なく通っていただけます。

「妊娠中に歯医者へ行くのは不安」という気持ちは、とてもよくわかります。だからこそ、まずは相談だけでも構いません。歯石取りが必要かどうか、今の時期に受けて大丈夫かどうか、一緒に確認していきましょう。

よくある質問

妊娠中でも歯石取りは受けて大丈夫ですか?

はい、歯石取り(クリーニング)は基本的にレントゲンも麻酔も使わない処置ですので、妊娠中でも安心して受けていただけます。特に体調の落ち着く安定期(妊娠16〜27週頃)が適しています。ただし妊娠週数や体調によって配慮しますので、受診時に必ず妊娠中であることをお伝えください。

安定期に入る前に歯ぐきが腫れてきました。どうすればいいですか?

妊娠初期でも、応急的なケアや歯みがき指導、清掃はできますので、我慢せずにご相談ください。つわりで歯みがきがつらい場合は、うがいを増やす、ヘッドの小さい歯ブラシを使うなど、その時期に合わせた工夫をお伝えします。本格的な歯石除去は安定期に計画して行うことが多いです。

妊娠中の栄養と歯の健康は関係ありますか?

大いに関係があります。妊娠中はカルシウムなどのミネラルバランスが崩れやすく、お口や全身のコンディションに影響します。当院では分子整合医学の視点から、食事や栄養の面も含めてアドバイスしています。「歯が弱くなった気がする」と感じる方こそ、栄養面からのケアが役立ちます。

まとめとご案内

妊娠中は歯ぐきのトラブルが増えやすく、歯石取りは体調の安定する安定期(妊娠中期)に受けるのが理想的です。歯石を取り炎症を抑えておくことは、お母さん自身の快適さだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にもつながります。中目黒駅近くの当院では、妊娠週数や体調に配慮しながら、栄養面も含めた全身的な視点で妊婦さんの口腔ケアをサポートしています。妊娠中の歯石取りや通院タイミングでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋

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