2026.08.26インプラント

糖尿病でもインプラントは可能?中目黒の歯科が語る血糖値と成功率の話

「糖尿病があるとインプラントは無理ですよね?」——これは、私が診療室で本当によく耳にする言葉です。歯を失って入れ歯やブリッジに悩みながらも、持病があるという理由でインプラントを諦めている方が、想像以上にたくさんいらっしゃいます。確かに糖尿病とインプラントの相性については慎重に考える必要があります。ただ、頭ごなしに「できません」と切り捨ててしまうのは、少し違うと私は感じています。

実際のところ、血糖コントロールがきちんとできていれば、糖尿病の方でもインプラント治療を受けられるケースは決して珍しくありません。今日はその線引きがどこにあるのか、そして当院がどう向き合っているのかを、できるだけ正直にお話ししていきます。

なぜ糖尿病がインプラントで問題視されるのか

糖尿病が骨や歯ぐきの治療で警戒されるのには、はっきりした理由があります。血糖値が高い状態が続くと、体の中では細い血管が傷みやすくなり、傷を治す力そのものが落ちていきます。インプラントというのは、顎の骨に人工の歯根を埋め込み、それが骨としっかり結合するのを待つ治療です。つまり「治る力」が土台になっている。ここが弱っていると、埋め込んだインプラントが骨と結合しにくくなるわけです。

もう一つ厄介なのが感染への抵抗力の低下です。高血糖の状態では白血球の働きが鈍り、細菌に対する防御が甘くなります。歯周病が糖尿病の方で悪化しやすいのも同じ理屈で、インプラント周囲炎という、いわばインプラント版の歯周病にもかかりやすくなる。手術後の傷口が化膿したり、せっかく入れたインプラントを支える骨が溶けてしまったり、という事態を招きかねません。

ただ、ここで強調しておきたいのは、これらのリスクは「血糖値が高いまま放置されている場合」の話だということです。逆に言えば、血糖コントロールが良好であれば、リスクは健康な方とそう変わらないレベルまで下げられるという報告が数多くあります。糖尿病そのものが絶対的な禁忌ではない、というのが現在の共通認識に近いのです。

HbA1cという数字が一つの目安になる

では、どのくらいの血糖コントロールなら治療に踏み切れるのか。ここで登場するのがHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という値です。過去1〜2ヶ月の血糖の平均を反映する数字で、糖尿病の管理状態を見るうえでとても信頼できる指標です。

多くの臨床の現場では、HbA1cが7.0%前後までコントロールされていれば、インプラント治療を前向きに検討できると考えられています。7%台後半から8%を超えてくると、慎重な判断が求められる領域に入ります。私自身、初診でいらっしゃった患者様には、まず内科の主治医と連携し、直近の血糖データを共有させていただくところから始めます。歯科単独で「やりましょう」と決めるのではなく、全身を診ている医師との二人三脚が欠かせません。

実際の診療では、数値がやや高めの方に対して、まず生活習慣の見直しや内科での治療強化をお願いし、数ヶ月かけて状態を整えてから手術に臨む、という流れをとることも珍しくありません。焦って治療を進めるより、土台を固めてからのほうが結果的に長持ちします。急がば回れ、というのはインプラント治療にこそ当てはまる言葉だと感じています。

骨の再生と治癒を支える研究の視点

骨がしっかり治るかどうかは、糖尿病の方にとって特に重要なテーマです。この領域では、骨の欠損を修復する材料や再生医療の研究が世界中で進んでいます。たとえば、ポリリン酸カルシウム(CPP)を用いた多孔質の足場材料に関する研究があります。2013年に報告された研究では、多孔質のポリリン酸カルシウム構造をウサギの大腿骨に移植し、骨の再生を促す土台としての有効性が検証されました。骨が入り込みやすい多孔質の構造が、再生の足がかりになるという考え方です。

さらに踏み込んだ研究もあります。2019年の論文では、血管内皮増殖因子(VEGF)という血管を新しく作る働きを持つ因子を組み込んだ複合足場が、血流の乏しくなった骨の壊死を治療する目的で開発されました。血糖コントロールが不良な方は血管がダメージを受けやすいため、こうした「血管を再生させながら骨を作る」というアプローチは、将来的に糖尿病患者の骨治療にも通じる可能性を秘めています。

また、2015年の研究では、ストロンチウムを加えたポリリン酸カルシウムと自家の骨髄由来細胞を組み合わせることで、骨の欠損修復に相乗効果が得られることが示されました。これらはまだ基礎研究の段階ではありますが、「治りにくい骨をいかに再生させるか」という問いは、糖尿病とインプラントを考えるうえで根っこの部分でつながっています。私たち臨床医も、こうした研究の潮流を常に意識しながら日々の判断を積み重ねています。

骨造成を避けられるバイコンインプラントという選択

糖尿病の方にとって、外科的な負担が少ないほど治療の安全性は高まります。当院が採用しているバイコンインプラント(Bicon Dental Implants)は、この点で大きな強みを持っています。

まず、バイコンはショートインプラントのパイオニアとして長い歴史を持ちます。通常、顎の骨が薄い部位では骨を増やす「骨造成」という手術が必要になりますが、これは体への負担も治癒期間も大きい。糖尿病の方にとっては特に避けたい追加手術です。バイコンは短くても十分な安定性を発揮できる設計のため、多くの症例で骨造成を回避でき、その長期的な安定性は数多くの臨床論文で裏付けられています。手術範囲が小さく済むことは、治癒力に不安のある方にとって何より大きなメリットです。

もう一つの特長がスクリュー(ネジ)を使わない1.5度ロッキングテーパー構造です。一般的なインプラントは土台と被せ物をネジで固定しますが、その隙間には細菌が入り込みやすい。糖尿病の方は感染に弱いため、この隙間が命取りになることがあります。バイコンはテーパー(先細り)のはめ込み構造によって隙間を極限まで減らし、バクテリアの侵入を防ぐバクテリアルシールを実現しています。さらに独自のプラトー(フィン)デザインにより、骨がインプラントの間に入り込んで成熟したハバース管を持つ本物の骨を形成する。これが強固で長持ちする骨結合につながるのです。

中目黒コヤス歯科が全身から診るということ

中目黒で歯科・インプラントをお探しの方に、当院が大切にしていることをお伝えします。私は歯学博士として、口の中だけを診るのではなく、体全体の状態からアプローチすることを一貫して重視してきました。

糖尿病はまさに全身の病気です。だからこそ、当院では栄養療法・分子整合医学の視点を取り入れています。血糖コントロールには食事や栄養状態が深く関わっており、傷の治りやすさ、炎症の起きにくさにも影響します。単にインプラントを埋めて終わりではなく、治りやすい体づくりまで一緒に考えていく。これが、他院とは違う当院の姿勢です。

もちろん、内科の主治医との連携を欠かすことはありません。血糖の状態を正確に把握し、リスクを丁寧に説明したうえで、無理のない治療計画を立てます。「持病があるから」と諦めていた方にこそ、一度きちんとお話を聞いてほしいと思っています。

よくある質問

HbA1cが高めですが、インプラントは完全に諦めるべきですか?

今の時点の数値だけで諦める必要はありません。多くの場合、内科での治療と生活改善によって数ヶ月でコントロールが改善します。当院では主治医と連携しながら、状態を整えたうえで治療できるかを一緒に判断していきます。まずはご相談ください。

糖尿病だとインプラントの寿命は短くなりますか?

血糖コントロールが良好で、定期的なメンテナンスを続けていれば、健康な方と大きく変わらない長期安定が期待できます。逆にコントロールが乱れると、インプラント周囲炎のリスクが上がります。治療後の管理がとても大切になります。

手術後に気をつけることはありますか?

術後は感染を防ぐことが最優先です。血糖値を安定させ、処方された薬をきちんと服用し、丁寧な口腔ケアを続けてください。喫煙は治癒を大きく妨げるため、この機会に見直していただくことを強くおすすめしています。

まとめとご案内

糖尿病があってもインプラントを諦める必要はありません。鍵を握るのは血糖コントロールと、体全体を見据えた治療計画、そして負担の少ない術式の選択です。バイコンインプラントの骨造成を避けやすい特性と感染に強い構造は、糖尿病の方にとって心強い選択肢になります。中目黒駅近くの当院では、持病をお持ちの方一人ひとりの状態に合わせ、内科とも連携しながら安全な治療を一緒に考えていきます。「自分の場合はどうだろう」と気になった方は、まずはお気軽にご相談ください。

中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋

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