2026.08.27インプラント

インプラント治療後にMRI検査は受けられる?金属と磁場の疑問を歯学博士が解説

「インプラントを入れているのですが、脳のMRI検査を受けても大丈夫でしょうか?」——この質問、実際の診療でとても多く寄せられます。特にご年配の患者様や、腰痛・頭痛などで整形外科や脳神経外科を受診された方から相談を受けることが少なくありません。金属が体に入っていると聞くと、強力な磁石を使うMRIの中で「引っ張られるのでは」「熱くなるのでは」と不安になるのは自然なことだと思います。

結論から先にお伝えすると、多くのケースでインプラントが入っていてもMRI検査は問題なく受けられます。ただし、いくつか知っておいていただきたい前提と例外があります。ここでは中目黒で歯科診療に携わる立場から、MRIとインプラントの関係を、できるだけ誠実に、そして分かりやすくお話ししていきます。

そもそもMRIとインプラントの相性はどうなのか

MRI(磁気共鳴画像診断)は、強力な磁場と電波を使って体内の断面を撮影する検査です。X線を使わないため被ばくがなく、脳や脊髄、関節などの軟部組織を精密に映し出せる優れた検査ですが、その原理ゆえに「磁性体(磁石にくっつく金属)」との相性が問題になります。

ここで大事なのは、歯科インプラントに使われる素材です。現在主流のインプラント体はチタンまたはチタン合金でできています。チタンは非磁性体、つまり磁石に引き寄せられない金属です。ですから、MRIの強力な磁場の中に入っても、インプラントが動いたり抜けたりすることは基本的にありません。この点は多くの患者様が心配されるポイントですが、まず安心していただいて大丈夫です。

一方で、まったく無関係とも言い切れません。金属が存在すると、その周囲の画像が乱れる「アーチファクト」と呼ばれる現象が起こることがあります。特に顎や顔まわり、脳の下部を撮影する際には、インプラントの位置によって画像が一部見えにくくなる可能性があります。命に関わる問題ではありませんが、診断の精度に影響する場合があるため、検査前に申告しておくことが賢明です。

MRI検査前に必ず伝えておきたいこと

MRIを受ける際、問診票に「体内に金属がありますか」という項目が必ずあります。ここでインプラントの有無を正直に記入してください。担当の放射線技師や医師は、金属の種類や位置を確認したうえで、撮影方法を調整してくれます。黙っていると得することは一つもありません。

特に注意が必要なのは、磁石で固定するタイプの入れ歯(マグネットデンチャー)です。これはインプラントや歯根に磁性金属を組み込み、磁石の力で入れ歯を安定させる方式で、この場合はMRIによって磁力が弱まったり、画像が大きく乱れたりする可能性があります。取り外せるタイプであれば、検査前に外していただくのが原則です。ご自身がどのタイプの補綴物を使っているか分からない場合は、治療を受けた歯科医院に確認するのが一番確実です。

私自身、患者様から「以前入れた治療がインプラントなのかブリッジなのか自分でも分からない」と相談されることがよくあります。過去の治療内容を把握しておくことは、こうした全身の検査を受けるうえでも意外と大切なのだと感じます。当院では治療の記録をきちんとお渡しし、いざという時に他科の医師へ説明できるようにしています。

当院が採用するバイコンインプラントとMRIの関係

中目黒コヤス歯科ではバイコンインプラント(Bicon Dental Implants)を採用しています。これはアメリカで長年の実績を持つシステムで、素材はやはりチタン合金です。したがって、MRIに関する安全性の考え方は前述の通りで、磁場によって動くような心配はありません。

バイコンの特徴として、一般的なインプラントが土台と被せ物をネジで連結するのに対し、スクリュー(ネジ)を一切使わない「1.5度ロッキングテーパー構造」を採用している点が挙げられます。部品を差し込んで摩擦で強固に固定するこの方式は、接合部に隙間ができにくく、細菌の侵入を防ぐ「バクテリアルシール」が得られることが報告されています。ネジのゆるみや、そこから起こるトラブルを構造的に回避しやすいのです。

さらにバイコンは、独自のプラトー(フィン)デザインによって骨との強固な結合を得ます。表面のヒレ状構造の間に骨が入り込み、天然歯の周囲に見られるようなハバース管(Haversian canal)を持つ成熟した骨が形成されることが組織学的研究で示されています。これは単に骨がくっつくというより、生きた骨として再構築されるという意味で、長期安定性の裏付けになります。加えてバイコンはショートインプラントのパイオニアとしても知られ、骨が薄い方でも大がかりな骨造成を避けられる可能性があり、数多くの臨床論文でその長期予後が報告されています。

お口の健康を全身から支えるという発想

MRIの相談をきっかけに感じるのは、お口の中の治療が実は全身とつながっているということです。近年の医学では、口腔内の炎症が全身の健康に影響することが繰り返し指摘されています。歯周病やインプラント周囲炎を防ぐために、日々のケアと食事、そして体の内側からの栄養が欠かせません。

意外に感じられるかもしれませんが、体に沈着する結晶が思わぬ症状を引き起こすこともあります。2024年に報告された腰椎の症例では、腰の激痛と発熱の原因が、感染症ではなくピロリン酸カルシウムの結晶沈着(偽痛風)だったことが、詳細な検査によって突き止められました。原因を正しく見極めることで不要な治療を避けられたこの報告は、症状の背景を丁寧に探ることの大切さを教えてくれます。歯科でも同じで、表面的な処置だけでなく原因を見つめる姿勢が欠かせないと考えています。

また、日々の予防についても科学的な根拠を大切にしています。フッ化ナトリウムとシリカ配合の歯磨剤に関する3年間の追跡研究(1981年)では、虫歯予防効果が確認されており、2002年のトリクロサン/ピロリン酸配合歯磨剤の6か月試験では、歯垢と歯肉炎の抑制効果が示されました。こうしたエビデンスをふまえ、当院では歯学博士である院長のもと、栄養療法・分子整合医学の視点も取り入れながら、お口と全身の両面から健康を支えるアプローチを行っています。

よくある質問

インプラントが入っているとMRIで熱くなりますか?

歯科用のチタンインプラントで、MRI中に危険なほど発熱することはまず考えにくいです。理論上、長い金属が電波を拾って発熱する可能性は指摘されますが、口腔内のインプラントは小さく、通常の検査で問題になることは稀です。心配な場合は検査前に必ず技師へ申告してください。

インプラントのせいで脳のMRI画像が見えなくなりますか?

金属の周囲に画像の乱れ(アーチファクト)が出ることはありますが、多くの場合、目的とする脳の部位の診断には支障ありません。撮影条件を調整することで影響を抑えられますので、放射線科の医師にインプラントの位置を伝えておくと安心です。

マグネット式の入れ歯を使っています。どうすればいいですか?

磁石を使った入れ歯は、取り外せるものであれば検査前に外していただくのが基本です。磁力の低下や画像の乱れを避けるためです。ご自身で判断が難しい場合は、治療を受けた歯科医院に確認するか、当院にご相談ください。

まとめとご案内

インプアラントが入っていても、多くの場合MRI検査は問題なく受けられます。素材のチタンは磁石に反応せず、動くことはありません。ただし、マグネット式の入れ歯や画像への影響には注意が必要で、検査前の申告が何より大切です。ご自身の治療内容を把握しておくこと、そして信頼できる歯科医院と長くお付き合いすることが、こうした場面で役立ちます。

中目黒駅近くの当院では、バイコンインプラントを用いた治療から、全身の健康を見据えた予防まで、一人ひとりに合わせて丁寧にご説明しています。インプラントとMRIのこと、あるいはこれからの治療について不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。中目黒で歯科をお探しの方のお力になれれば嬉しく思います。

中目黒コヤス歯科 院長 小安正洋

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